第10章 下忍スタート
結局、挨拶らしい挨拶も出来ずにスグルさん達はお帰りになり、私は必死で二人を撒いて家に帰ってきた。
「ただいま〜…。」
今日も一日長かったぁ〜。
もう、くったくたですよ。
「おかえり。あら、今日は任務じゃないって言ってなかった?」
汗だくの私を見た母さんが首を傾げる。
「ね。任務じゃなかったのにね。」
そう言うと、母さんは私の全身を見回した。
「…喧嘩でもしたの?」
そう思っちゃうよね。
私は自分の姿を見回してげんなりする。
うちはの家紋が入った白の羽織は、砂だの緑のシミだのが付いて薄汚れてるし、所々ほつれてるし、黒のハーフスパッツは端が何箇所か切れてるし。靴も埃まみれ。全身は枯れ葉だの草だのが付きまくってる。
「あーあ、折角の新品が…。」
って位には、本気で追いかけられた。
明日にはクールダウンしてくれてるといいんだけど。
「…お前、どこに行って来たんだ?」
帰って来た兄ちゃんが、後ろから声をかける。
「おかえり〜。」
「おかえりなさい。今日は早いわね。」
私と母さんが声をかける。
「今日はちょっとやることがあって、この後また出かけるんだ。」
兄ちゃんは微苦笑を浮かべて言うと、靴を脱ぐ為に玄関に腰掛る。
そして背を向けたまま、エニシ、と呼びかけられた。
「今日の夜、南賀ノ神社で会合がある。」
それを聞いて、母さんは僅かに手で口を覆う。
「準備しておけ。」
それだけ言うと、真っ直ぐ自分の部屋へと歩いていった。