第8章 宝の持ち腐れ…は、まずいよね
『許せ、サスケ。…これで最後だ。』
帰り道、イタチの最期を思い出していた。
確かイタチの最期って、サスケに敗れてって言うより、病気で死んだって言ってた気がする。
何度も吐血してたし。
つまり…
その片鱗がもう現れてるって事…?
「イタチ…、大丈夫かな…。」
私は振り返った。
そこには誰もいないけど、イタチの姿を思い出す。
サスケを膝に抱いて嬉しそうに笑ってた。
あんな顔、初めて見た。
次いで、痛そうに蹲るイタチを思い出して、胸がぎゅっとなる。
「無理しなきゃいいな…。」
そう思うと同時に非力な自分がもどかしかった。
帰りに、ふと思い立って図書館へ行ってみた。
指で背表紙をなぞりながら目的の本を探す。
「医療書…、医療書…。…あった。」
私はぺらぺらっと中を確認すると、ニ、三冊を手に取って空いている机に座った。
いつもそうなのか、今日は偶々なのか、人が殆どいなくてがらがらだった。
ぱら、ぱら、とページを捲っていく。
体の位置からして、多分胃の腑の辺り。
解剖図を開いて確認すると、
「…やっぱり、胃だよね。」
イタチが抑えていたのは胃の腑だった。
吐血を伴う病状を調べていくと、それっぽいものに突き当たる。
食道性静脈瘤、十二指腸潰瘍、出血性胃炎、
そして…。
「胃癌…。」
本によれば切除手術による完治は難しいとの事。治療は専ら医療忍術だそうだ。
それも進行度によってはつきっきりの治療になるから、費用も莫大だし時間も膨大にかかる。
よって、治療そのものが絶望的になるらしい。
「…もし…。」
もし、イタチが胃癌だったのなら?
もし、いい医者が見つからなかったら?
イタチは生き残れない。
「けど…。」
もし、自分が医療忍術を会得したなら?
費用も時間も関係なくなる。
つきっきりで診れる。
「これだ…。」
進む方向が照らされて、はっきり見えた気がした。