第3章 片想い
幸希side
「すっっごく良かったよ!お疲れ様!」
劇も終わり、休憩しようと衣装のまま再び2人と合流した。
千尋が目を輝かせながら飲み物を渡してくれた。
千尋の後ろからは叔父さんが笑顔で歩いてきていた。
「お疲れ様、幸希。演技上手いな。」
「うん……ありがとう。……この格好どう?//」
叔父さんに見て欲しくて腕を広げて体を軽く後ろに捻って見せた。
ん?と首を傾げて少し考えているようだった。
声が小さくて聞こえなかったのか。
恥ずかしくて黙っていると、千尋が何か察した様で「すっごくかっこいいよ!似合ってる!」と食い気味に答えた。
「そう……」
その言葉は千尋ではなく叔父さんから欲しかった。
「じゃあ俺はそろそろ帰るけど……あ、2人共写真撮ってやろうか?」
「え?いや、いい……」
面倒くさくて断ろうとしたが千尋がその言葉を掻き消すように「お願いします!」と答えてしまった。
いつもの千尋と少し様子が違うように感じた。
「じゃあ並んで。幸希、もっとくっつけ。」
千尋とよりも叔父さんとの写真が欲しい。
こんな格好もう二度としないだろうし。
俺は少し不貞腐れたような顔をしてしまい、その瞬間にシャッター音が聞こえた。
「拓真さんも一緒に撮りませんか?」
千尋が叔父さんにそう声をかけスマホを取り出した。
「いいのか?」と一瞬躊躇いを見せたが少し嬉しそうな表情になり俺の横に駆け寄ってきた。
そのまま俺の肩を掴んで引き寄せられた。
「っ!?//」
驚きと同時にシャッターが切られた。
よく撮れてるが俺の顔がとんでもなく赤くなって嬉しそうな表現をしていた。
無意識に口角が上がってしまったのだろうか。
「よく撮れてるな。じゃあそれ俺にも送ってくれ。またな、お二人さん。」
「お、おう……//」
送ってくれ?千尋と連絡先交換してるのか?
叔父さんの姿が見えなくなった後、千尋が溜息を吐き俺に向けて
「拓真さん、良い人だね。」
と優しい笑顔で言った。
その言葉を聞いた俺は焦りと不安が一気に募る。
「千尋……お前叔父さんのこと……」
『好きなのか?』と言いかけた所で学校の放送が入った。
文化祭が残り2時間というお知らせのチャイムのようだ。
「ん?何?」
「いや……何も無い。」
答えを聞くのが怖くなり俺は言葉を飲み込んだ。