第3章 片想い
幸希side
「ごめんね遅くなっちゃった!」
今日は文化祭だ。
千尋とは休憩の時間を合わせて回ることにしていた。
「そんなに待ってない。忙しいのか?」
「意外と大人気なんだよね。」
千尋のクラスは喫茶店をしている。
どうやらクラスメイトに実家が地元の大人気カフェを営んでいる人がいるらしく、メニューもオマージュしたようなものばかりのようだ。
「そういや行列できてたな。」
「そうなんだよね。案内するのも大変。」
ここに来るまで何ともなかったようで安心した。
校外からも客は来るため、千尋の身に何も起こらないか心配していた。
「服、そのままで来たんだな。」
「あっうん!どう?似合ってる……かな?」
ウェイターの格好をしている千尋は1周くるっと回り照れくさそうに笑った。
「いいと思う。」
「よかった//」
千尋と出し物を回りながら途中で空腹を満たす。
デートをしているようだ。
隣にいる千尋も今までに無いくらい楽しそうにはしゃいでいる。
俺も時間を忘れて楽しんでいた。
中庭に来てひと休みしようと芝生の上に座る。
いつもなら静かな場所も今日は騒がしい。
「ふぅ、お腹いっぱい!」
「結構食べたな。」
「今日食欲がすごいんだよね。……楽しいー!」
そう言って千尋は芝生の上に寝転んだ。
幸せそうだ。
「食べて横になると牛になるぞ。」
「うっ……分かってます……でももう動けない……」
2人で時間までゆっくりしてようと話していると名前を呼ばれた。
「あ!いたいた!幸希!」
「!叔父さん!?なんで!?」
仕事で来れないって言ってたはずなのに。
うわー、プライベートの叔父さんやっぱかっこいい……
普段のスーツもかっこいいけど……
「もしかしてその子が?」
「は、初めまして!佐藤千尋って言います!!//」
千尋は慌てて座り直し叔父さんに挨拶をした。
「ぷっ、ははは!頭に草付いてるよ。」
そう言って叔父さんが千尋の頭に手を乗せて振り払った。
……うわ……モヤっとする。
「す、すみませっ//」
このいい雰囲気何なんだよ……
俺は2人の良い空気を割って入る勇気が無かった。
ヤキモチを焼きながらもお似合いだと認めてしまった。
本来あるべき姿を目の当たりにして俺の恋は実らないんだと改めて確信した。