第1章 俺の嫌いなモノ
幸希side
叔父さんは遥の兄弟。
けど、血は繋がってはいない。
元々親友同士で遥の両親が亡くなってから叔父さんの家に引き取られたらしい。
戸籍上は兄弟だが、親友でもある。
叔父さんは車で来てるからと俺を家まで送ってくれた。
俺の特等席の叔父さんの隣は物凄く居心地がいい。
遥も乗せたことないらしい。
俺が小さい頃からこの席を好んでたみたいで叔父さんに泣きついてたとか。
その頃から俺はこの人の事を好きだったのかもしれない。
「着いたぞ。」
「ありがと...ねぇ、叔父さん。今彼女とかいるの?」
聞きたくないことをなぜ聞いてしまったんだと後悔する前に叔父さんは答えてくれた。
それも少し悲しそうな声で。
「いないよ。」
あぁ...
俺は叔父さんのその言葉と表情に納得してしまった。
きっとまだ遥以上に好きになる人がいないんだ。
叔父さんと遥は俺が産まれるずっと前に付き合ってた時期があった。
ただ、今の親父と色々あって別れたと。
その色々も含め少し親父に腹が立つが...決めたのは遥だ。
元ヤクザの長とそういう関係になることを覚悟して遥は決めた。
だったら俺も何も言えない。
ただ、叔父さんが不憫すぎる。
「まだ...好きなの?」
「...いや、流石にそれはないよ。今更変えられないし、お前には幸せになって欲しいからな。」
そう言って俺の頭を撫でる。
幸せに?
「ねぇ...それならさ...」
『俺と付き合ってよ』
俺はその言葉を呑み込んだ。
何を言おうとしてるんだ。
どうせ振られる。
「...今度一緒に遊んでよ。ショッピングでもいいし、ドライブでもいいからさ。」
「あぁ。約束だな。」
嫌いだ...Ωなんて...
俺の好きな人を奪ってしまうΩなんて大嫌いだ。
それもこの世界のせい。
でも分かってる。
本当に嫌いなのはこんな感情を持っている俺自身だ。