第1章 銃と薔薇
「ん〜微妙だったなあ」
私は気づいたら石造りのアパートが立ち並ぶ細い裏道に誘われていた。
「うっわぁ、迷子になっちゃった〜…」
少し焦りながらもそこら辺を散策していると「お姉ちゃん」と言う声が聞こえた。
「ん?」と振り返ると小さな女の子がこちらを手招きしていた。
手招きされた方へ走っていくも女の子はどんどん先へ行ってしまう。
寒空の下スリットの深いスカート、そしてブーツをカツカツと鳴らしながら追うも全く距離は縮まらない。あの子、かなり早い。飛んでいるみたいにふわふわと走ってる…
「待って……あなたは…だれ…?どうしたの?」
ゼエゼエハアハアと息を切らし、やっと細い道を抜け、光が差した。
「何ここ……、教会…?」
大きく開けたところには大きな教会が立っていた。
15世期くらいに建てられた趣のある煉瓦造りの教会だった。そこの大きな門を押して女の子は『こっちこっち』と手招きをする。
あたりには人がいたにもかかわらず、皆彼女には我関せず、のような態度であった。
「お邪魔しまーす…」
っとギギギギっと大きな鉄の門を音を立てて入る。
やはり中には人っ子一人いない。目の前にあるのは大きなマリア像の壁画。
芸術は全くわからないがかなり古く、美しいものだとわかる。
女の子の姿は見当たらない。
「綺麗…」
「そうでしょう、綺麗でしょう」
はっと後ろを振り向くと神父が立っていた。
髪は白髪交えではあるがイタリア人というよりもドイツ人に近い体格。そして優しそうな明るい笑顔の30代くらい。
しかし神父の足音も何もしなかった。
「このマリア像が描かれたのは不明なのですが、ルネッサンス期にこちらの教会にやってきた、と言われています。毎日この辺の住民はこの美しきマリア様を拝んでは涙を流してしています。ところで、日本人がこちらにいらっしゃるのは珍しいですね。今日は何ようで?美しき日本人」
「は、はぁ。女の子を探しているのですが…こちらに入ったのを見かけて」