第10章 奇襲
「辛かったな…
裏梅を護ってくれて ありがとう
あすか 、お前も少し休むと良い」
あすか の背を撫でながら老婆は そう言った。
『私は大丈夫。
宿儺さまを探しに行かなきゃ』
老婆にそう言うが、老婆は背を撫でていた手を止め、あすか の目を見て聞いた。
「あすか 、お前は呪いになっても【人】を殺せるのかい?」
『………』
「宿儺は お前が呪いに転じた時、喜んでいたか?」
老婆の言葉で、宿儺の表情を思い出す あすか 。
あすか が呪いに転じた あの日。
宿儺の口角は上がり、確かに笑っていた。
ただ、仮面を付けていない方の眉尻は下がり、何処か寂しそうな、泣きそうな表情をしていた。
「宿儺は お前を自分と同じように呪いにさせてしまった事を悔やんだのではないか?」
『…そうかも、しれません』
老婆は もう一度 あすか を抱きしめて言った。
「少し休め。
契りを交わし、ともに呪いとなった今、時の流れは お前達の邪魔などせぬ。
時が必ず2人を導く」
老婆の言葉に、あすか はコクンと頷き裏梅と同じ封印を自分にもかけようとした。
「あすか 、俺も あすか と一緒に結界で封印してくれ」
蒼の申し出に『良いの?』と聞けば、「当たり前だ」と蒼は答えた。
蒼と自分を結界で囲い、あすか は老婆に手を振って別れを告げた。
あすか の封印が発動し、あすか の残穢が消えた。