第17章 生得領域
『それも違う。恵や野薔薇、悟。みんな大切なの。でもね、悠仁は他の子と違って、放っておけないの。懐かしい感じがする、って言うか…。だから私の命を差し出すくらい問題ないの』
「…………」
まだ納得いかない、という表情の虎杖に、あすか は諭すように言った。
『こんな仕事してれば、【死】はいつでも隣り合わせでしょ?
もっと違う道もあったかもしれない。でも宿儺さまの指を飲み込んだ事で器になって死刑宣告までされている状況…。
大切に悠仁を育ててくれた おじいさんが聞いたら悲しむと思うの。だから縛りを結び直したの』
「…ん」
渋々納得したように虎杖は返事をした。
『悠仁はたくさんの人に囲まれて死ぬのよ』
にこり、と笑った あすか を見て、虎杖が照れたように頬を染めると キン と音がして虎杖の姿が消えた。
『…宿儺さま、此処(生得領域)でも悠仁をそう簡単に刻まないで』
はぁ、と ため息をつく あすか に、宿儺はフンと鼻を鳴らした。
宿「小僧に口づけする必要はなかったのでは無いか?」
『直接 脳に呪いをかけるには口づけが良いと思ってしたんだけど、…焼きもち??』
クスクスと笑う あすか に、宿儺は「そうだ」と答え、あすか は驚いた。
宿「俺は何故そこまで あすか が小僧に肩入れするのか分からん」
『さっきも言ったように、悠仁は何だか特別なの。宿儺さまは悠仁に、どこか懐かしい感情はない?』