第11章 流れ
あすか の封印の中は春のような暖かさで、不思議と眠気に襲われる。
封印に閉じ込めた人が無駄な体力を遣わないように あすか の配慮なのだろう。
あすか は蒼が眠りについた事を確認し、自分の封印の中で しばし眠りについた。
☆ ☆ ☆
裏梅と あすか 、蒼が封印されてから どのくらいの年月が経ったのだろうか。
タマゴの殻が割れるように封印は自然に ぱりん と割れた。
随分と建物が増えた景色が広がる。
『……どれくらい経ったのかな。
裏梅は どぅしたかな?』
あすか は独り言のように呟いた。
『とりあえず、その辺を歩いてみようか。蒼は私の中に入ってる? 何処かに留まっていたい?』
「あすか の中に居るさ」
そう言って、蒼は あすか の中に入り、「1人ではない…俺が居る」と言って気配を消した。
あすか は辺りをぷらぷらと歩いたが、非術師ばかりで自分の姿が視える者と会えず今の西暦を知ることができなかった。
カサ…、足元に紙が舞い、紙を拾い上げ内容を確認する あすか 。
見れば新聞のようだ。
『2000年?』
新聞の端の西暦を確認した あすか は改めて周りを見渡した。
人間が着ている服も様変わりし、自分と同じような和服を着ている者は見あたらない。
それに負の感情が強く渦巻いている。
あすか にとっては問題はなかったが、呪霊である自分と契約をしている蒼がいつ邪神になってもおかしくない状況に、あすか は早く この場から離れる事にした。