第4章 ふーせんください!
降谷のオフィスにただならぬ空気が流れていた
大人の男達に囲まれたマスコットキャラクターの着ぐるみが真ん中に一人、ポツンと立っている
耳が大きく、頭にアンテナがついている、動物の可愛らしい部分を詰め込んだと言われているあのオレンジのマスコットキャラクターである
そしてその中に入っているのは部下の一人、永山
「降谷さぁ~ん、なんで私が着ぐるみなんですか~」
「仕方ないだろ、会議でクジを引いたら‘着ぐるみで警備’が当たってしまったんだから」
「だからって私じゃなくても他に人いるじゃないですかっ!」
「仕方ないだろ、あみだくじをしたら君になってしまったんだから」
今週末に控えた交通安全イベントの警備に公安も参加することになり、公安内の各部署の代表が集まって会議をしたところ、降谷の部署から一人着ぐるみ警官を出すことになってしまったのだ
そして見事選ばれたのが永山で、そもそもくじで決めてたんだ…と引き気味の部下達である
「正直、子どもなんて相手した事ないんで、練習したいです…」
「そう言われてもな……」
「あれ?ピー〇君だ!」
「リュウさん!」
ちょうど良いところに入ってきたリュウに経緯を説明し、降谷監督ご指導の下、子どもを相手にする練習が始まった
「リュウ、まずは普通に風船を貰いにくる子ども役だ」
「ふーせんくださーい!」
着ぐるみは話せないのでジェスチャーを使って挨拶をし、風船を持ってるつもりで渡す永山
そしてリュウは
「わーい!ありがとー!」
とニコニコと普通に風船をもらった
あれ?なんか可愛くないか?とザワつき始める部下達
「じゃあ次、恥ずかしがり屋な子」
「あ、あの…えっと…///」
恥ずかしそうに顔を赤らめ、目を逸らしたり上目でチラッと見たり、内股でモジモジしながら近寄って行く
「ふ、ふー…ふーせんっ…///」
ちょんちょん、と着ぐるみに触り、胸の前で両手を組み見上げながら
「くださいっ!///」
と勇気を出して言う
部下達には背景にキラキラしたエフェクトが見えているようで、「天使ィー!」とガッツポーズを始めた
すると〇ーポ君が頭を撫でてくれて、
「あ…ありがとぉ…///」
とにっこり安堵の笑顔を見せるリュウ
「いいぞォォ!」と盛り上がる部下達の中には、尊いと涙を流す者も…