第8章 その痕は…
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午前中の仕事を片付けたリュウは風見に連れられて子供服売り場に来ていた
首元の見えてしまう痕には応急処置で絆創膏を貼り、そうしなくても良いようにハイネックの服を購入する予定だ
「サイズは140でしたよね」
「うん、ギリ130でもいけるんだけど、あんまりキツキツなのは嫌かな…」
風見はサイズを確認しながら何枚か棚から取り腕に掛け、1枚1枚広げながら次々とリュウの身体に合わせていく
手馴れている風見の行動にリュウは両手を横にしたままじっとしているしかなかった
「服合わせるの慣れてるね…」
「降谷さんの潜入用の服を調達するより簡単ですし、本人が目の前にいるので悩まずに済みますから」
パッパッと色々な柄のハイネックを合わせる風見から真面目な返事をもらったが、本人の顔をみるとどこか楽しそうで、まるで自分が着せ替え人形になった様な気分になる
「そうだ、仕事用に無地のも欲しい!」
「そうですね。じゃあコレとコレと…」
多めに持っていて損はないですと、風見は先のことも考えて仕事用と外出用とでかなりの枚数をカゴに入れた
「お会計は…」
「自分でするよ!って言っても後で零に請求するけどね」
こんなことになったのは零のせいだと領収書を叩きつけてやろうと思っているリュウだった
「お会計お願いします!」
レジに行きカゴを台に乗せてくれたのは風見で、店員にお願いしたのは子どものふりを始めたリュウ
「ご挨拶きちんとできてえらいわね!」
「うん!」
店員に褒められにっこりするリュウを見た風見は毎度の如く演技派…と思うのだった
「それに、お父さんと一緒でいいわね~!」
「う、うん!」
「ハハハ…」
この2人で歩いていると親子に見えるのか…と2人で心の中で苦笑いをしてしまった
そしてお金を出す際もリュウが自分の財布からレジ台の受け皿にお金を出すと、
「自分でお買い物ができるのね!」
とやたら褒めてくれる店員である
「そろそろ自分で買い物ができるように勉強中なんですよ」
「僕お金の計算もできるよ!」
咄嗟に親子を装い会計を済ませる
そしてこれ以上話し掛けられない様にとやや足早で店を出るのだった