第8章 その痕は…
公安内の降谷が束ねる部署内に、いつもの様に場に合わない可愛らしい声が響いた
「おはようございます!昨日は急なお休みごめんなさいっ!」
公安の天使こと音月リュウが風見と共に登庁し元気に挨拶をした
昨日の急な休みと言うのは赫々然々な理由から発熱した為で、もちろん部下達はリュウの熱での休みをずっと心配していた
「もう大丈夫なんですか?」
「元気になって良かった!」
「病み上がりなんで無理はしないでくださいね」
など優しく声を掛けてもらい、リュウは早速研究室で仕事に取り掛かる
通常の業務に加えて今日からは赤井の真相を追うべくコナンの周りを洗い直さなければいけない
タイミング良くコナンからも午後から阿笠博士の家に来て欲しいというメールが入っていて、今日中にやらなきゃいけない仕事は昼までに片付けないとと、病み上がりだからとセーブして仕事をしている場合ではなかった
科捜に回せない様な公安案件のデータ解析が回ってきたり、部下達が整えた警備体制書類のデータ化や、防犯カメラや音声の解析などなど…毎日こんなにも解明していかなくてはならない物があると、この国の治安は大丈夫かと考えてしまうこともある
こんな内密なことを10歳の子どもにさせても何も言わない部下たちは、きっと上からの圧に押されているのかもしれない…
「永山さん、この前の事件のデータです。確認お願いします」
「助かります!…あれ?リュウさん虫刺されですか?」
研究室から部署に戻って出来上がっていたデータを永山に渡すと、永山はリュウの首元に赤い痕を見つけ気になって声を掛けた
「へ?虫刺され…?」
「ほら、ここ赤いですよ!」
永山はデスクの引き出しから手鏡を取り出しリュウに向けてくれた
そして自分で動いて首元を写した途端、リュウは即座に首元を手で隠す
「ほ、本当だ…虫に刺されたのかな、アハハ…」
「痒みがある時は言ってくださいね!薬あるんで!」
リュウはありがとうと言いながら逃げるように次のデスクへと向かう
なぜ逃げるようにかと言うと、リュウの首元のこの赤い痕、実は今朝方降谷から付けられたキスマークなのだ
「(着替えた時は見えてなかったのに…)」
わるあがきでしかないかもしれないが、リュウは襟を引っ張って肩を上げながら歩いた