第17章 ただ私は蘭ちゃんの過去の写真が気になっただけなのに【前編】
どこにも電車や踏切もないのに、そう不安げに蘭ちゃんを見上げる。蘭ちゃんも驚いた様子で私を見下ろしていた、その時突風が吹き荒れ私はギュッと目を瞑る。ゆっくり目を見開くとーー…知らない場所へと来てしまっていた。
「蘭ちゃん…?らん、ちゃ…蘭ちゃんっ!」
何で、何で蘭ちゃんがいないの?えっ?何これ夢?それとも現実?そう震える手で蘭ちゃんへと連絡を取って見ても繋がらない。
「蘭ちゃん、やだっ!蘭ちゃんっ!蘭ちゃーー…」
「さっきから蘭ちゃん、蘭ちゃんってもしかして俺の事〜?」
「へっ?きゃあっ!?」
全く音もなく背後を取られていたからびっくりするように飛び跳ね後ろを振り返った。警棒を肩にトントンさせて私を見下ろして来る金と黒のコントラストが綺麗な艶のある三つ編み、そして黒一色の特攻服…灰谷蘭がそこにいた。しかも若い。多分高校生くらいだろうか…?
「らん、ちゃん…?」
「はぁ〜い♡蘭ちゃんで〜す♡で、お前誰?」
「わ、私は…水無月、栞です」
「ふぅ〜ん…栞ねぇ…そんな知り合いいたっけかぁ?」
「……知り合いではないですね」
「だよなぁ…じゃあ何で俺の事呼んでたわけ?」
「え、えっと…」
じっ…と見下ろされ居心地が悪い、すると私の眼鏡を取られてしまいアワアワする私に驚いたように目を見開くと恍惚に笑った。何だろう…何だかとっても嫌な予感がするぞ???蘭ちゃんのこの笑顔はろくな事がないーー…あれ?何で私お姫様抱っこされてるの?