第1章 快適過ぎて逆に困る。
「はっ?えっ…なんで、こんな所に…女の子が、一人でいるわけ?」
「っ…」
「ははっ…怯えてんの?スゲェ可愛いなぁ♡お前、名前は?何て言うんだよ♡」
「水無月栞、です…」
「へぇ…声も可愛い♡俺は三途春千夜、気軽に春ちゃんって呼んでいいぞ♡」
明らかにカタギじゃなさそうな男性に目を付けられてしまい正直それどころじゃない。どうしよう…逃げた方がいい?いや絶対に駄目だ…逃げられる気がしない。この目の前の人には逆らっては駄目だという警告音が鳴り響いていた。
「あのっ…聞いても、いいですか?」
「ん?言える事ならなんでもいいけど?」
「ここ、どこですか?私…さっき電車に轢かれて…気付いたら、ここにいたというか…」
「……えっ、何お前…薬でもやってんの?」
「薬なんてやってません!頭が可笑しいのは私だって重々承知しています!でもっ…本当に、分からなくてっっ…」
泣くつもりなんてなかったのに、先程から訳の分からない事に巻き込まれて色々あり過ぎて頭の中がぐちゃぐちゃになっていた。ボロボロと涙を流す私に、春ちゃんさんは酷く狼狽えて困った様子で頭をぐしゃぐしゃとかいていた。
「俺女の子の慰め方とか知らねぇんだけど。あーもー泣くなよ、言い過ぎた、悪かったって…」
「っ、ふ、ぅ…ぐすっ…」
「栞、さん…?の言いたい事は分かった。まぁもしかすると、あながち嘘でもねぇかもな…」
「えっ…」
「俺、最初に聞いたろ?なんで女の子が一人でいんのって…」
「はい…」
「隠れてた所を見るに、さっきまで男に追い掛けられてたとか、そういう感じだろ?」
「はい…」
「栞さんの世界がどうか知らねぇけど、ここの世界は男女比率が男9に対して女1なんだよ」
「はっ…?」
だから先ず女は家の中で丁重に男に囲われて過ごしているのが普通で、お前見たいに一人でふらっと外に出歩いているのはかなり異常なんだよ、そう春ちゃんさんは丁寧に教えてくれた。ゆっくりとした動作で立ち上がった春ちゃんさんは、私へと手を差し出して来る。
「ん。ほら、行くぞ」
「えっ、どこに…?」
「行く所ねぇんだろ…俺と一緒に来るか、ここで他の男共に輪姦されるか、今直ぐどちらか選べよ」
「究極の2択しかなくて、泣きそうなんですが…」