第2章 time travel
耳鳴りが鳴り終わると、いつの間にかそこは別の場所に飛ばされた気分だった。
『あれ……?さっきまで自分の部屋に……』
「気づきました?!」
双葉に声をかけてきたのは黒髪の男性。
その顔に見覚えがあった。
『あなた……昨日の事故で亡くなったはず……』
そう、被害者の身分証明証で見た顔。
先日の事故で亡くなったはずの橘直人だった。
(どういうこと??)
双葉は起き上がると、横にはまた見覚えのある人物。
そう、そこにはついさっきホームから突き飛ばされていた男性だった。
「話は別の場所に移りましょう。世良双葉さん」
『え、私の名前をどうして……??』
世良は確かに双葉の苗字だ。
だが、表向きは佐野を名乗っていたし、警察手帳に身分証明書も佐野で偽造していた。
「そのことも後で。さぁ、行きますよタケミチ君」
「この人って誰なの?ナオト」
タケミチ、と呼ばれた男性も双葉のことをわからないままナオトに連れられてとあるマンションの一室に連れていかれた。
そこに着くと、ナオトは口を開いた。
「世良さん……貴方はさっき、僕を見て“昨日亡くなったはず……”とおっしゃってましたね」
『私のことは名前で呼んでくれないかしら。訳あって世良姓を名乗ってないの』
「……それは公安警察だからですか?」
『……!』
「え、公安??」
ナオトと双葉の会話にタケミチはついていってなかった。
「2人とも面識はまだでしたよね、こちらの女性は世良双葉さん。普段は佐野双葉と名乗られています。
で、こっちの男性は花垣武道くんです」
「でもなんで普段は別の苗字なんだ?」
『それは私が公安警察に所属してるからよ』
そして双葉とナオトはタケミチに公安警察について、そして偽名を名乗ることについてを簡単に説明した。
「わかりました……じゃあ双葉さんって呼べばいいのですか?」
『歳も1個と大して変わらないし、タメでいいわよ。タケミチくん』
「じゃあよろしく双葉ちゃん!」
「それで、なぜ2人にここに来てもらったかというとですね……」
ナオトは2人に事の説明をした。