第10章 さよなら北の海
ローは海図を広げてから偉大なる航路(グランドライン)とリバースマウンテンについてクルーに話した。
「グランドラインと大陸のレッドラインによって海が4つに別れているんだが、ノースブルーを始めほかの海にも繋がっているでかい山があるんだ。そこを上って1本の下りを下りると偉大なる航路に繋がっている。」
みんなはベポが描いた拙い航海図を見ながらふむふむとローの話を聞く。
ローは一呼吸置いてさらに続ける。
「ここの激流に気をつけながら潜水して進もうと思う。過酷になるかもしれねぇが明日夜、挑みたい。」
「船長!俺たちはどこまでもついていきますよ!」
シャチがニィっと口を広げて笑った。
「そーそー!俺たちはハートの海賊団!船長が行くとこに俺たちも行く!」
ベポがオーっと拳を上げる。
それは他の仲間も同じ覚悟を決めていると物語っていた。
(すごい…やっぱり信頼があるんだ…)
青年の人望の厚さにナデシコは尊敬にも似た眼差しで彼を見つめていた。
みんなを強く優しく見守る彼がふとナデシコの視線に気づいたのかバッチリ目が合ってしまった。
恥ずかしくなってすぐにぱっと目を逸らす。
「ナデシコ?どうかしたの?」
イッカクが逸らした目線の先にいたからかそちらにも目が合う。
「あ…いえ。なんでもないです。」
「そう?」
ナデシコはニコリと誤魔化すように笑った。
その日の夜。
ナデシコが甲板で夜風に当たっているとコツコツと足音が響いてきた。
振り返るとローが刀を持ち甲板へ出てきた。
「ローさん?どうかしたんですか?」
「いや、お前の姿がなかったからどこに行ったのかと探してたんだ。」
「そうでしたか。」
「眠れないのか?もう見張り以外とっくに寝てるぞ?」
「…はい。ちょっと寝付けなくて…ローさんもそうなのですか?」
「あぁ、そんなところだ。
ここでは俺の人生で色んなことが起こった海だからな。そこから旅立つと思ったらどうもただ寝てるだけじゃ物足りねぇ気がして。」
ローは船の柵に寄りかかりフッと笑った。