第9章 参謀の策略
「ゴメン、ケンチン。オレ、総長失格かな?」
「……この歓声が答えじゃね?」
ドラケンの返しに、マイキーはニッと笑う。
その後、アタシの方を振り返った。
「和月」
アタシが泣いてた時と同じ、安心させるように優しく、でも真剣な眼差しで。
「場地が一虎側に行った理由は、オレにもわかんねぇ。けどアイツは、どこに居たってダチだし、仲間だ」
「!」
マイキーが「仲間」と言った事に、アタシは心の底から嬉しく思うと同時に、ひどく安心した。
「な?」
「…うん!」
アタシはマイキーに笑い返して、少しだけ潤んでしまった目元を拭う。
アタシ達は、まだ歓声の止まない隊員達を見る。
「マイキーのお陰で、士気は充分。これで乱戦もイケるかな」
「まだ5対5のタイマンの可能性もあんだろ」
「ハハッ、そうなったら100%勝てるけど」
マイキー・ドラケン・三ツ谷・スマイリー・ムーチョの最強5人でやってもらうけど。
「反東卍を集めた芭流覇羅が、数の有利を捨てて5対5を選ぶと思う?」
「…ま、そりゃそーだな」
アタシはドラケンを見上げる。
「ケン、アンタには半間を倒してもらう」
「!」
「喧嘩の腕は今更だけど、アイツは目が良いんだよ。こっちの攻撃を見逃さない、だからマイキーの蹴りも受け止めて見せた」
8・3抗争で半間と戦って、アイツの強さが身に染みた……アタシじゃ、半間を倒すことは出来ない。
「でも、ケンなら勝てる。絶対に」
「任せろ」
「マイキーは一虎と……てか、絶対に向こうから狙ってくるだろうし」
「ああ」
マイキーは頷いた後、じっとアタシの目を見つめる。
「和月は……」
「アタシは、圭介を止める」
「「!」」
本当は、一虎を止めたかった……けど、余計な心配かけて、マイキーやドラケンの動きを邪魔しちゃったら元も子もないから。
だったらアタシは、「場地を東卍に連れ戻す」為に動く。
「何回殴ってでも、圭介をマイキーの前に引っ張ってくるから、楽しみにしてて」
アタシはグッと拳を突き出して、総長に向かって笑う。
マイキーは、それに応えて
「任せたぞ、参謀」
コツンと、アタシに拳を突き合わせた。