第5章 8月3日
思考が奪われるほど、感度が高くなって抵抗出来なくなる。
長い、長いキスから解放されると、アタシは自分の口に手を当てて必死に呼吸を整えた。
「手ぇ邪魔」
マイキーはその手を退かして、アタシの顔を覗き込む。
「ハハ、涙目になってる。かーわい♡」
「うるさい」
頬を緩めて笑う、マイキーの熱を持った眼差しが恥ずかしくて、アタシはマイキーの肩に額をつけた。
「こーら、顔隠すな」
スルッ
「ひ、あっ⁉︎」
腰にあったマイキーの手が、裾からTシャツの中に侵入し、アタシの背中を撫でてきた。
反射的にアタシの背はしなって、マイキーはその隙にアタシの首にキスをする。
「やっ…ま、待って…!」
「待たない」
じわじわ追い詰められてるような感覚が嫌で、アタシはマイキーの肩に手を置いて抵抗する。
マイキーはそれを咎めるように、アタシの首に歯を立てた。
「いっ、た…」
「んー」
ヂュッと鳴る音と一緒に、首にはチクッとした痛みが走る。
噛まれた上にキスマ付けられた……アタシは、抗議するようにマイキーの目を睨んだ。
「痕つけんなって、いつも言ってンのに……」
「オマエはオレの、ってシルシ」
チュッ
ご機嫌そうに言って、マイキーはまたアタシの首にキスをした。
その時、浴室のドアの開く音が耳に届いた……エマがお風呂から上がったらしい。
アタシは、マイキーの肩に置いてた手に力を入れて、マイキーから体を離す。
「あ、オイ!」
「今日はもう勘弁して」
腰に回された手を掴むけど、マイキーは放してくれない。
「喧嘩した後で、ケンの事もあったし、アンタだって疲れてるでしょ?」
「オマエ、オレが今更やめると思ってンの?」
マイキーが顔を近づけてくるのを、アタシはマイキーの口を押さえて拒否した。
「今日はもうやめ!アタシお風呂入りたいし」
「……ふーん」
マイキーは、アタシの手を口から剥がして、ニッと笑う。
「じゃあ、一緒に入ろーな♡」
「ホントに勘弁して‼︎」
抵抗は呆気なく砕け散り、アタシはマイキーに抱えられ風呂場まで連れてかれてしまった。
大変な一日だったのに、どこにこんな体力残ってんだろ……と、思わずにはいられない夜だった。