第2章 Gears turn(前日)
「推薦入隊?」
瀞霊廷・十番隊隊主室。
手渡された書類に目をやりながら、
十番隊隊長・日番谷 冬獅郎はその書類の持ち主に聞き返した。
横からは、副隊長である松本 乱菊が書類を覗き込んでいる。
渡した書類を指差しながら、浮竹は朗らかに答えた。
「ああ。間も無く霊術院を卒業する子でね。
とても優秀なんだ。」
日番谷の手にする書類は、ある人物の真央霊術院の成績表と卒業証明、そして護廷十三隊への入隊推薦状だ。
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成澤 紫苑
真央霊術院 卒業見込み
特進一組
白打演習 : 最良
剣術演習 : 最良
鬼道演習 : 最良
歩法演習 : 最良
戦術学 : 最良
霊廷史 : 最良
………
………
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…などなど。
ずらーーっと並んだ殆どの科目において、申し分ない評価が示されている。
「突然のお願いですまないね。この子はきっと十番隊とも相性が良いと思うんだ…もし良ければ受け入れてくれないか?」
浮竹の言葉を聞きながら、日番谷はざっと書類に目を通した。
成る程、これだけの実力者なら入隊しても即戦力になるだろう。しかも隊長が直々に一生徒を推薦しにくるなんて非常に珍しい。
それだけの理由があるという事なのだろうか。
ただ…
「随分と時期違いだな?」
「ああ、いや…それが…」
日番谷の問いに、浮竹は少し苦笑して言い淀んだ。
通常、霊術院は六年間の修学期間がある。本来護廷十三隊の入隊式が行われる六回生の卒業時期は、まだ9ヶ月も先だ。
「それが、彼女は入学試験の時に六回生への飛び級が決まってね。しかもそのカリキュラムを、3ヶ月で終えてしまったらしくて…」
「えぇ〜、すごい天才じゃないですか。隊長みたいっ!」
「うるせぇ…」
揶揄うように声をあげた乱菊に、日番谷は半ば呆れてため息を返した。
飛び級などの前例は、ごく稀だがあることにはある。市丸ギンや志波海燕、かく言う日番谷自身もその一人だ。
圧倒的な才覚を持ち、その実力が認められた場合、あるいは入隊試験を免除される事例もある。そうした人物たちは自ずと死神の高官位…それこそ、隊長副隊長を務めている者も少なくなかった。