第1章 PROLOGUE
動揺と怯えで霞んでいた少女の瞳が、初めて強い光を帯びる。
浮竹は目を細め、わずかに微笑んだ。
「……俺と一緒においで。
君は、死神にならなければならない。」
「隊長…!?」
その言葉に仙太郎と清音は驚愕した。
当然だ。相手は超危険地帯八十地区の出身者、
しかもどういうわけか瀞霊壁と遮魂膜のセキリュティを掻い潜って侵入してきた、明らかに異様な不審者だ。
隣であたふたする第三席の二人に、浮竹は宥めるように言葉を続ける。
「仙太郎、清音、大丈夫だから。
俺を信じてくれ。……君もね。」
そう言って、2人と同じくらい動揺している少女に投げかけた。
「俺は護廷十三隊 十三番隊隊長、浮竹十四郎。
君の名を、教えてくれるかい?」
じっと、浮竹を見据える。
少女は、本能的に感じていた。
この人は、自分の運命を委ねていい人物だと。
むしろ彼こそが、強い気配への導き手であると。
『…成澤…紫苑…』
「紫苑…そうか…」
その少女、紫苑の名を聞いた浮竹は、噛み締めるように呟く。
それを聞いた清音は、その声色にドキッとして、浮竹を見上げた。
それはまるで、涙でも浮かべているのではと思うほど、感じ入った声音だったからだ。
***
遠い現世で黒崎一護と朽木ルキアが出会うより5年前。
そしてこの少女、成澤 紫苑が
護廷十三隊に入り十番隊に配属される、
およそ一年半前の出来事だった。
-------PROLOUGUE fin.