第3章 Flash(邂逅)
「…よし。まあ初日には気の早え話だったな。
松本、執務室に案内がてら色々教えてやれ」
「はいは〜い」
話は済んだようで、ウキウキとした乱菊に立つように促された紫苑。
「さあ成澤、早速いきましょ!
執務室…の前に行きつけの茶屋と和菓子屋と飲み屋も紹介しなきゃだし…あ、あんたお酒大丈夫?」
「前言撤回だ。松本、お前は成澤を森屋に預けたら早急に戻ってこい」
紫苑の背中をグイグイ押しながら、畳み掛けるように喋りかける乱菊を、物凄い形相の日番谷が引き止める。
「なーに言ってんですか隊長!これも任務に関わる超重要事項ですよ?」
「お前のサボりに付き合わせることを任務にすんじゃねぇ!」
などと、ギャーギャー言い合いを続ける上官二人をぼんやり眺めながら、紫苑はルキアと甘味処に行ったときのことを思い返していた。
——あの日、街中で初めて姿を見たあの時から。
ようやく、ここまで来た。
私の気持ちは、私の覚悟は
誰にも知られなくていい。
ただ、私の全てを賭けさせてほしい。
時間も、能力も、運命も。
そのためだけに、私はここにいるのだから。
揺れる銀髪を見つめ、紫苑の中にある想いが形を帯びていく。
死覇装をまとった背筋が、心なしかスッと伸びる。
紫苑が気を取り直すと、日番谷と乱菊はまだ言い合いをしていた。
「…ね!? 成澤もそう思うでしょ?」
「おい、新人を巻き込むんじゃねえ」
勢いよく食い下がる乱菊とそれを制する日番谷に、紫苑は思わず遠慮がちに笑みをこぼして
『…どうでしょう…?』
とはにかんだ。