第5章 東京卍リベンジャーズ・松野千冬
彼女と見つめ合ったまま
俺は固まったように動けなくなってしまった
" 好きだから付き合ってる訳だし "
" オレの気持ちは…言葉にしなくてもちゃんと彼女に伝わってる "
三ツ谷君に自信満々に語っていた自分を
思い切りぶん殴りたかった
(は?何も伝わってねーじゃん…)
照れくさいってだけで
本当の気持ちを見せることから逃げていた
それが
どれだけ彼女を不安にさせていたのか
考えもせずに
そのくせ
一人前に嫉妬だけはしていたなんて
(……オレ……ダセェな…)
『……千冬…君…?』
名前を呼ばれて我に返った俺は
目の前で心配そうな顔をしている彼女の瞳を見つめた
「………レイナ………………オレ……レイナのこと…好きだよ…………もちろん…特別に思ってる…」
『……ぇ…』
「………言葉で伝えんの照れくさくて………ずっと…言えなくてゴメン…」
(………違う…………こんな言葉じゃ…足りねぇよ…)
このまま沈黙になってしまうのが怖くて
俺は彼女の唇を塞いだ
(……もっと…もっと伝えたい………オレの気持ち…分かって欲しい……)
想いのまま
柔らかな感触の間を舌先でかき分けていく
『……ん…』
いつもとは違ったキスに
レイナの頬がこわばる
あごに右手の親指と人差し指を添わせたまま下にさげると
シュミレーションしたのと同じように
彼女の口が開いていく
舌を侵入させ
力を入れないように気を付けながら
ゆっくりと確かめるように動かした
『……ん………んっ……』
ピチャピチャという水音と共に
くぐもった声が漏れ始める
レイナは苦しげに眉を寄せていた
けれど
それでも止めずに俺は口腔を犯し続けた
『……ん…ぅ……………っ…はぁ……』
不意に
俺のシャツを握る指に力が入って
彼女の膝がガクンと崩れる
腰に腕を回して身体を支え
透明な糸を引いて唇を離すと
レイナが閉じていた瞳を開けた
『………ハァ……ハァ………ち…ふゆ……くん…』
トロンとした眼差し
ピンクに染まった頬
そこには
見たことのない顔をした彼女がいた