第5章 東京卍リベンジャーズ・松野千冬
「……ごめん……歩くの早かったね…」
彼女を怖がらせないように優しく髪を撫で
頬に触れる
何故こんなに冷静を装えているのか
自分でも分からなかった
「……飲み物……持って来ようか?」
そんな俺を見て
レイナがホッとしたような声で言う
『……ううん………大丈夫…………………ハァ………良かった…………松野君……怒ってるのかと思った…』
「…どうして?」
感情を抑えた声に
レイナは微かに眉をひそめる
「……何か……怒らせるようなこと…したの…?」
『……ぇ…?』
(……ほら……その目だよ……)
不安そうな上目遣いを見つめながら
俺は微笑んだ
「………別に怒ってなんかいないよ………ただ……」
レイナの肩を両手で掴んで
ドアに押し付ける
「……早く……レイナと2人きりになりたかっただけ……」
首を傾げて唇を塞ぐと
彼女の身体がピクンと震えた
チュ…と音を立てて離れ
瞳を覗く
『……ぁ…………名前……』
「……オレはレイナの彼氏なんだから……いいでしょ?」
『…ウン……嬉しい…』
「……でも………他の男には呼ばせないで…」
『……っ…あれは…』
「分かった?」
反論の言葉を遮る
『……………分かった…』
怯えたような瞳が加虐心を煽る
自分にこんな感情があるなんて
今まで知らなかった
『……松野…君…?』
「…………オレのことも…名前で呼んで?」
『………ぁ…』
レイナは頬を染め
恥じらうように目線を落とした
『………………千冬……君……』
優しい声が
波立った心を少し静めてくれる
「……ありがと…レイナ…」
彼女の身体が離れていかないように
強く強く抱きしめた
「………………オレ………レイナのこと…誰にも渡したくない…」
熱を持った耳に近付けた唇から
本音が溢れ出てしまった
『……ぇ…』