第5章 東京卍リベンジャーズ・松野千冬

「…キッカケがないと言うか……そういう雰囲気に全然ならないんス…」

「……何でだろうな……そんだけ一緒に居たらキッカケなんていくらでもありそうなのに…」


眉を寄せて考え込んでいた三ツ谷君が
静かな声で言った


「……千冬……ちゃんと彼女に自分の気持ち伝えてるか？」


俺はドキッとして目を逸らす


「…き、気持ちって……あの…」

「……オマエが彼女の事をどう思ってるかだよ。……上手く言えなそうだったら…" 好き "とか…そーゆー短い言葉でもいーからって、前に話したよな？」


確かに
三ツ谷君から以前
相手を想う気持ちを口に出して定期的に伝えるようにとアドバイスを受けていた

けれど
俺はどうしても照れくさくて
実行できないでいたのだった


「え゛……いや………そ、それは…」

「何？…言ってねーの？」

「……チョット………何か…まだハードル高いッス…」

「…はぁ？…って事は一回も⁇………たしか…彼女は告白の時に好きだって言ってくれてんだよな？」

「…まぁ……で、でも…向こうからだってその時だけっスよ？」

「……だからそれは…オマエが言わねーからじゃねーの？」

「…ぇ……いや…あの……言おうと思ったことはあるんスよ……けど…いざとなると喉の奥が詰まったみたいになって……その…」


口ごもる俺を見て
三ツ谷君はため息をついた


「で、でも！…オレの気持ちは……もう…ちゃんと彼女に伝わってると思うんで！」


根拠はなかったけれど
なぜか自信だけはあった


「……」

「だから…オレらの間では……す、好きとか…そういう事は敢えて言わなくても大丈夫ッスよ！」


(……だって……好きだから…付き合ってる訳だし…)


キッパリと言い切ったのに
三ツ谷君はまだ半信半疑のようだった


「…ふーん…」