第16章 東京卍リベンジャーズ・佐野万次郎
『……聞いた?……タケミチ君、結婚するって…』
ベッドの上で
俺の腕まくらに頭を乗せていたレイナの口から
懐かしい名前が溢れた
「…………そうらしいな……」
『……昨日、一虎が私の店に来たの………知らないって言っといたけど……アナタを探してる…』
「………あぁ…」
最近、タケミっちが一虎と手を組んで俺を探しているという話は
聞き込みに来られた末端の店の者達から幾つか報告が上がってきていた
梵天の名前を口にすることさえ恐れているような奴らから、俺の情報が漏れる心配はしていなかったが
だいぶ、無茶をしているのだろう
2人がかなり深い所まで入り込んできているのが気がかりだった
『……会ってあげないの?』
おずおずと聞いたレイナから
俺は顔をそらした
「………今さらだろ…………それに、会えば殺すしかなくなる…」
『……』
衝動のことを知っているレイナは
そんな言葉を聞いても、驚いたりはしない
彼女は全てを理解した上で
俺を受け入れてくれたのだった
だからこそ
抑えられないこの黒い衝動から守るために、東卍の仲間達と距離を置いた俺が
ただ、ひとりだけ
レイナのことだけはどうしても手放せないでいた
「………ごめんな…」
身体に刻まれた赤い跡をなぞると
彼女は俺の心の中を読んだかのように言った
『………万次郎は……私のことだって守ってくれてた。…ちゃんと分かってるよ…………何のコネもない私みたいな人間が…あんな一等地に立派なお店持てるなんて……普通だったら考えられないもん…』
「……」
『………守ってくれてたんだよね?……ずっと。……………どうもありがとう……』
包み込むような笑顔でそう言われた時
心が満たされていくのを感じた
東卍の仲間も
コイツの事も守ってやれているのなら
この道を選んだのは、やっぱり正しかったのだ