第16章 東京卍リベンジャーズ・佐野万次郎
レイナを初めて抱いたあの夜から
長い月日が経っていた
東卍の仲間とは
もう、10年以上何の接触も取っていなかったが
大昔に交わした約束通り
俺たちはずっと関係を続けていた
これまでに
数えきれないほど身体を重ねたけれど
レイナとひとつになれないもどかしさが
未だに俺の心の中でくすぶっていた
どんなに強く抱きしめても
彼女から何度『好きだ』と言われても
心は遠いままで
その原因は、多分
俺たちの始まりである " 場地圭介の喪失 " にあった
これほど長い間場地のことを引きずったのは
悲しみの乗り越え方を間違ったからなのかもしれない
でも
あの頃の俺は
あんな方法でしかを彼女を慰めてやれなかったし
レイナもそんな俺に心の拠り所を見つけて
ついてきたんだと思う
不器用な俺たちは
互いに依存し合ったまま
歪んだ大人に成長していった
今にして思えば
渋谷を出たばかりの頃の
狭い部屋で一緒に暮らしてた数週間が、1番幸せだった
レイナからは事あるごとに『また一緒に暮らしたい』とねだられるけれど
ここまで組織が大きくなってしまうと、とてもそんなリスクは冒せなくて
だから
俺たちが会うのは月に一度
月末の水曜日だけで
場所はいつも
こんなホテルの一室だった
彼女は、俺のセーフハウスの場所を知らない
六本木のマンションに独りで暮らし
数年前から、インポート物のインテリア雑貨の店を経営している
俺たちの関係を知っているのは
梵天のなかでもごく限られた連中だけだった