第16章 東京卍リベンジャーズ・佐野万次郎
どこをどう通って来たのか何も思い出せなかったが
気が付くと俺は場地の墓の前にいた
ここに独りで来るのは、東卍を解散させた夜以来だった
千冬や隊員達が頻繁に会いに来ているからか、いつも新鮮な花が供えられているアイツの墓石の前には
好物だったペヤングの箱が未開封のまま置かれていて
日が暮れて薄暗くなった墓地の中で、それだけが白く浮き上がっているように見えた
「………場地…………オレ……千冬のこと殴っちまった…」
静かな墓地に
俺の声だけが響く
「……千冬だけじゃない………ケンチンも………三ツ谷も………八戒も………ペーやんも………スマイリーとアングリーも………みんなだ。…………東卍も無くなったし………アイツら…これでもうオレと関わろうなんて2度と思わないだろうな…」
黒く冷たい墓石と向き合ったまま
俺は心に溜まった愚痴を吐き出すように言葉を続けた
「……タケミっちが教えてくれたんだ…オレの未来……………アイツ、過去を変えるために未来からタイムリープしてきたんだ…」
タケミっちから聞かされた話を思い出すと
未だに体が震えてしまう
「…………オレ…さ………このまま東卍やってたら…みんなの事殺しちまうんだって…………信じられるか?……こんなにアイツらのこと大事に思ってんのに…オレがみんなを…っ…」
喉の奥が詰まって、声が出なくなる
俺は大きく深呼吸して
込み上げてくるものを堪えた
「………そんな話、信じたくなかったけど…タケミっちの目に嘘はなかった。…………場地は気付いてたろ?…オレが持ってる衝動のこと……………昔からずっと…止めてくれてたもんな…」
俺の心の中にある、黒い " 何か "
初めて感じたのは
春千夜の口を裂いてしまった時だった
あの時、我を忘れた俺を必死に抑え付けてくれたのは場地だった
たまに、黒い " 何か " が俺の中に広がると
全てをぶち壊したくなる衝動に襲われる
その衝動が時間と共に強くなってきているのを
以前から感じていた