第16章 東京卍リベンジャーズ・佐野万次郎
千冬は俺の手を振り払い、ヨロヨロと上半身を起こすと
地面に両手をついて頭を下げた
「……マイキー君……お願いです………レイナさんの事、傷付けないでください…」
「………何でオマエがそこまでする?………場地の為か…?」
場地の名前を聞いて
千冬は強く唇を噛んだ
誰からも慕われていた場地のことを改めて思い出した俺の頭の中に、残酷な加虐心が芽生えた
「…いいこと教えてやるよ。………オレとレイナは身体だけの関係…セフレみたいなモンだ…………アイツが好きだった場地の代わりに…オレが抱いてやってるだけなんだよ」
「………ひでぇ…………何で…そんな事言うんスか…」
「本当の事だからだ…」
「……っ…」
「…分かったか?…オレ達は別に付き合ってる訳じゃねぇ………アイツを側に置いとくも突き放すも…オレが決められるモンじゃねぇんだ………レイナがオレを嫌ンなったら、その時点で全部終わりなんだワ」
「…………だとしたら……レイナさんがマイキー君を嫌になる訳がありません…」
千冬は顔を上げ
俺の目を真っ直ぐに見つめて言った
「………レイナさんは……場地さんよりもマイキー君を選んだんですよ…」
「……は?……何言ってんだテメェ…」
「…場地さんが東卍を辞めた夜、レイナさんは言われたそうです……" オレはマイキーの敵になった。いくら女でも中途半端な立ち位置は迷惑だ。アイツを敵に回せるなら一緒に来い "…って…」
「……」
「……レイナさんは……" それはできない " って断ったって言ってました。……それから場地さんとは距離ができてしまったそうです…」
話を続ける千冬の声が、次第に遠くなっていく
「………知らねぇよ……そんなこと…」
俺は立ち上がり
千冬に背を向けてその場を後にした
(……レイナが…場地よりもオレを選ぶなんて…)
感じたのは
喜びよりもむしろ困惑のほうだった
(……そんな話を今さら聞かされて……どうしろっていうんだ…)