第5章 東京卍リベンジャーズ・松野千冬
付き合い始めたばかりの頃の俺は
場地さんとの別れや東卍の解散など
色々なことをキチンとまだ受け止めきれていなくて
心の中に
とても大きな穴が空いたまま
何となく毎日をやり過ごしていた
なので
彼女ができたと言っても
正直それほど浮ついた気持ちにはなれなかった
2人きりで過ごすのは
彼女の部活が休みの日に一緒に帰る時くらいで
同じクラスに居ても挨拶程度しかしない俺たちを見て
周りの奴らからは「オマエら本当に付き合ってんの?」とよく揶揄われた
付き合い始めて1ヶ月が過ぎた
ある日の昼休み
いつも4、5人のダチとたむろしてる屋上で
突然聞かれた
「…なぁ千冬……織月とどこまで行った?」
「…へ?」
昼メシの後でウトウトしていた俺は
どうしてコイツらがニヤけているのか咄嗟に分からなかった
違う奴が
少しじれったそうに聞き直す
「…へ?じゃねーよ……もーヤる事ヤッたのか?」
「……っ…」
フリーズした俺を見て
その場に居た奴らもみんなフリーズした
「…まさか…お前…」
「……何もしてねーワケじゃ…ねーよな?」
ソイツらは
顔を引きつらせながらグイグイ詰め寄って来る
「……そーゆーの……忘れてた…」
「「「「はぁ⤴︎⁇⁇」」」」
「何やってんだよバカ‼︎」
「せっかくのチャンスだろーが」
「信じらんねぇ」
「ガッカリだわ」
散々な言われようにキレかけながらも
いつも特に自分から何か会話を始める事はなく
ポツリポツリと話す彼女に相槌を打ちながら歩いて家の前まで送り
そのまま「じゃーな」と帰るだけだった自分を反省した
「……」
「…あり得ねーだろ…あんな可愛い子と一緒に帰って何も手出さねーって…」
「……付き合って1ヶ月も経ちゃ…小学生でも色々すんだろーよ…」
「…織月、幻滅してんじゃねーの?」
「…そりゃそーだワ……勇気出して告白したのに…可哀想によ…」
「……」
(……確かに…幻滅されているかも知れない……)
送って行った時
レイナはいつも家の門の前で『また明日ね』と手を振る
彼女の少しさみしそうな笑顔を思い出して
俺はガックリと肩を落とした