第16章 東京卍リベンジャーズ・佐野万次郎
あの頃のレイナは
俺に対しても心を開いてくれていたと思う
何の根拠も無かったが
彼女にとって、俺と場地は
周りに居るその他大勢の奴らとは違う " 特別 " な友達なんだという自信があった
けれど
同時に俺は気付いていた
レイナが " 1番特別 " な視線を向けている相手は
俺ではなく
場地だということに
言うまでもなく
場地もレイナを大切に思っていた
母子家庭同士で、物心がつく前から交流があったという2人は
本当に仲が良く
友達というよりも
どこか、家族や兄妹のような関係に見えた
「じゃーなマイキー!」
「万次郎、また明日学校でね」
空手の稽古の後
夕方まで遊んでから
俺の家の門の前で、いつも2人はそう言った
並んで帰っていく背中を見送る俺の所まで2人の楽しそうな笑い声が聞こえてくる度
場地のことを羨ましく思っていた
俺はずっと
レイナの " 1番特別 " になりたかった
友達よりも、もっと親密な
レイナにとっての
場地みたいな存在になりたかった
・
・
・
「…話すの…久しぶりだな…」
『……そうだね…』
「…………場地とは………アイツが転校して引っ越してからも会ってたのか?」
『………ウン………まぁ……』
「……」
レイナと時々会っているなんて話は
場地から聞いていなかった
場地は元々
自分からそういう話をする奴じゃなかったけど
転校した後も俺の知らないところで2人の仲が続いていたと知って
改めて
場地とレイナの " 特別な " 関係性を思い知らされたような気がした
(……もしかしたら……2人は付き合っていたのかも知れない…)
場地の気持ちも
レイナの気持ちも分かっていた俺は
小学生のガキの頃より2人の関係が先へ進んでいたとしても、何も不思議ではないことに
この時ようやく気が付いた
(……なんだ……やっぱりそうだったのか…)
ショックを受けたことに変わりはなかったが
こんなにも冷静に受け止められたのは
心のどこかで覚悟していたからなのだろう
目の前に居るレイナが
自分の知っている彼女とは違う女のように思えた