第15章 東京卍リベンジャーズ・黒川イザナ
受け入れ難い現実を目の当たりにするのが恐ろしくて
一旦はその場を離れようとしたが
彼女の母親の涙ながらの説得に
結局、イザナは応じた
案内されるまま、エレベーターで病室のある階へと上がり
薄暗い廊下を歩いていく
「…ここです」
立ち止まり
壁に貼られたプレートを見ると
そこには " 織月 レイナ " と
彼女の名前が確かに書かれていた
「……」
真っ白なドアに手を掛け
静かに開ける
明るい光に包まれた個室
角度をつけたベッドに背をもたせ掛けるようにして
ボンヤリと窓の外を見つめている女の姿があった
「…………レイナ、か?」
生気のない横顔にイザナが呼びかけると
肩がピクリと震え、女がゆっくりとドアの方へ顔を向ける
『……………イザナ…?』
名前を呼ぶ懐かしい声が聞こえた瞬間
痩せこけた頬にポロポロと涙が零れた
「……っ……レイナ……」
無意識に
身体が動いていた
イザナはベッドに近付くと
伸ばされた細い両腕を引き寄せ、彼女を抱きしめた
『…………来て……くれたの…?……………夢じゃないよね…?』
「……夢なんかじゃねーよ。バカ…」
そう言いながらイザナは
どうかこれが悪い夢であって欲しいと願った
「…………何で…連絡しなかった…」
『………だ…って………イザナはもう私のことなんか…』
「馬鹿ヤロウ‼︎」
『……っ…』
「………このまま………黙って居なくなるつもりだったのかよ…………たった独りで…?………ふざけんな…」
『……』
「………そんな事…させねぇよ………させる訳ねぇだろ……………そんな事の為に…オマエを手放したんじゃねぇ…」
『……イ…ザナ…』
イザナは身体を離し
真っ直ぐにレイナの瞳を見つめた
「………レイナ…………あの時……酷いこと言って…オマエを傷付けた…………本当にゴメン……………オレの前で…ずっと無理して笑ってるのは知ってた………でも…見えない所で泣いてるオマエに気付いた時……このまま一緒に居たらいけないと思ったんだ……………オレの側に居ても幸せになれない………そう思ったから…」
『……』
「…………オレ…………オマエには…絶対に幸せになって欲しかったんだよ…」