第15章 東京卍リベンジャーズ・黒川イザナ
キングサイズのベッドが置かれたその部屋は
窓際の分厚いカーテンが引かれたままになっていた
壁にある照明のダイヤルをひねったが、電球が切れているのか明かりがつかなくて
寝室のドアを閉めると、イザナは真っ黒な闇に包まれた
手探りで潜り込んだベッドから、微かにレイナの香りがして
毎晩のようにこの部屋で
たった独りで眠っていた彼女の姿が浮かんだ
「………オマエ………暗がりは苦手だったろ…」
呟いた瞬間
こめかみに何かが伝うのを感じた
胸が苦しくなったイザナは
枕に顔を押し付け、思い切りレイナの香りを吸い込んだ
翌朝
鶴蝶は独りでマンションを訪ねた
ドアを開けたイザナは目元に酷いクマを作っていて
酒の匂いをさせながら、ヨロヨロとリビングへ歩いていくと
倒れ込むようにソファに突っ伏した
「…鶴蝶……水くれ…」
「………いま、持ってくる…」
水を注いだグラスをイザナの前に置いた鶴蝶が
テーブルの上を片付けながら、レイナが自宅へ帰ったことを伝えると
イザナは「そうか」とだけ答えた
「……」
常に強気で、弱味を見せない " 不死身のイザナ " と呼ばれる男の
これほどまでに憔悴した姿を目にした鶴蝶は
言葉を続けることが出来なかった
言ってやりたいことは、たくさんあったはずだった
けれど
もう何を言っても
いま以上にイザナを悔やませることはできないだろう
そう感じた鶴蝶は、全ての言葉を飲み込むことに決めた
・
・
・
昨夜、この部屋を飛び出したレイナに、鶴蝶はエレベーターの前で追い付いた
何て声をかけたらいいか分からないまま1階へ降り
トボトボと歩き出した小さな背中を見つめながら、黙って後をついていった