第15章 東京卍リベンジャーズ・黒川イザナ
それから、数ヶ月が経った
黒龍の八代目総長を襲名してからのイザナは
天現寺のアジトに入り浸り、ほとんど横浜へは帰らなくなった
(……見てろよ真一郎…… " 万次郎 " ってヤツにふさわしい黒龍を…オレが作ってやる…)
イザナ率いる八代目黒龍は
それまでずっと受け継がれてきた初代の志をことごとくぶち壊し
ゆすり、強盗、薬など
ありとあらゆる悪事に手を出して、黒く染まっていった
イザナは
灰谷兄弟から " 金を作る天才 " だと教えられた九井一を使うため、九井が唯一言うことを聞く乾青宗という男を側近に置いた
乾とは、いつか真一郎のバイクショップで見かけた
額に火傷の痕がある、あの少年のことだった
初代黒龍に強い憧れを持っていた乾を利用するだけ利用し、九井の力で金を作り出していくうちに
いつの間にか、八代目黒龍は " 極悪組織 " と呼ばれるようになっていった
イザナに八代目を継がせた真一郎は
この状態を知っても、何も言ってはこなかった
ずっと隠されていた弟の存在を打ち明けられた数日後
イザナは真一郎にハガキを出した
" 拝啓 真一郎様 "
" 最近、ずっと頭が痛い "
" 苦しい "
" きっとアイツのせいだ "
" 万次郎の話はもうしないで "
万次郎のせいでどれだけ自分が傷付いたか
苦しい胸の内をビッシリと書き連ねた
真一郎に手紙を書いたのは、それが最後だった
佐野万次郎の存在を知った時から
イザナは頭の中を彼に支配されてしまっていた
本当なら自分が居るはずの場所
長い長い間、イザナがずっと焦がれ続けていた場所で
今ものうのうと暮らしている万次郎が、憎くて仕方がなかった
弟への嫉妬と恨みでいっぱいになったイザナは
真一郎が継がせたいと言っていた黒龍をメチャクチャにすることで、万次郎を傷付けようとした
自暴自棄になったイザナの中で
夢に描いていた王国の意味は変わっていき
次第に
レイナが素敵だと言ってくれたような理想の国ではなくなっていった
イザナには、その事もよく分かっていた
でも
このまま引き下がりたくなくて
どうしても、自分を止められなかった