第15章 東京卍リベンジャーズ・黒川イザナ
「今日のお前の表情[カオ]を見て、もう話しても大丈夫だと思った」
真一郎はそう言うと
これまで黙っていた " 万次郎 " という弟の話をイザナに聞かせた
年齢や性格、エマともとても仲が良い事など
ずっと話せなかった反動もあってか、たくさんの情報を一気に伝えてくる
けれど
イザナの耳にはひとつも入って来なかった
ひと通り話し終え、ホッと息をついた真一郎に
「そろそろ帰るよ」と言うと、イザナはバイクショップの前へ戻った
真一郎が単車から降りると、挨拶もせずに走り去る
「…………は?………アイツ……" お兄ちゃん " じゃ…ねぇのかよ…」
グルグルと渦巻いていた気持ちが
無意識に口元からこぼれ出す
「……真一郎の弟は……エマの兄はオレなのに………何でそこに違う奴がいるんだよ…」
腹の底から
ドス黒い何かが込み上げてくるのを感じた
(…………万次郎………絶対に許さない……)
頭が
割れるように痛い
空を見上げると
いつの間にか灰色の雨雲が一面を覆いつくしていた
視界が歪むのを感じたイザナはアクセルを全開にして、逃げるようにその場を走り去った
イザナがマンションに帰ったのは
それから3日後だった
玄関を開けると
リビングのドアが勢いよく開いて、鶴蝶とレイナが走り出てきた
「……どこ行ってたんだよイザナ……ずっと帰って来ないから心配したぞ…」
「……」
「…携帯かけても出ないし………何か、あったのか?」
「……別に……アイツらン所行ってただけだ…」
「……」
『……』
イザナは顔を見合わせている2人の横をすり抜けるようにしてキッチンへ向かうと
グラスに水を汲み、ポケットから取り出した痛み止めを飲んだ
雨がシトシトと降り続いたこの3日間、ずっと頭痛に悩まされていた
何とか楽になりたくて頻繁に薬を飲んだが、気休め程度の効果しか感じられなかった