第15章 東京卍リベンジャーズ・黒川イザナ
『ちゃんと彼女にして欲しい』
大きくなり続けるイザナへの想いを抱えて、" お試し " という関係性が苦しくなってしまった私は
ある夜、そう言って彼に全てを捧げた
勇気を振り絞った告白の返事は、結局聞けずじまいだったけれど
イザナは初めての私をとても大切に抱いてくれた
そう
彼はいつも私を大切に扱ってくれた
言葉や態度がそっけない時でも
彼の根っこにある、包み込むような優しさが
澄んだ瞳の奥から常に伝わってきた
自分が汚れてしまったこと
そして、それを彼に知られてしまったことがどうしても受け入れられず
絶望感から逃げ出そうとした時
イザナは
初めて私を " 綺麗だ " と言って、抱きしめてくれた
辛いことを全部忘れられるように
もうこれ以上、傷付かないように
彼はあの時から
今もずっと、私を守り続けてくれている
約束通り迎えに来てくれたイザナにこの部屋に連れて来られ
一緒に暮らすようになってから、もう数ヶ月が経っていた
けれど
彼は未だに私を求めてはこなかった
キスをしたり、優しく抱きしめてくれることはあったが
その先はいつもはぐらかされてしまう
とはいえ
いざそういう雰囲気になった時に、自分がどうなってしまうのか
彼を受け入れたいという気持ちに、この身体がちゃんとついてこられるのか
イザナと離れている間、自分でも予想が付かないタイミングで襲ってくるフラッシュバックに何度も苦しめられてきたトラウマが邪魔して
正直、強い自信は持てなかった
もし、彼を拒絶してしまったら
突き放してしまったら
イザナを傷付けるのが何よりも怖かった私は
自分からは一歩先へ踏み出せずにいた
表に出しているつもりはなかったけれど
彼はきっと、そんな私の心の中を敏感に読み取っていたのだろう
この手首に刻まれた痕が複数あることについても
気付いていないはずがないのに、何も言ってはこなかった