第15章 東京卍リベンジャーズ・黒川イザナ
翌朝
荷物を取りに帰ったレイナを
彼女の両親は咎めるでもなく、かと言って快く送り出す訳でもなく
ただただ黙認した
理不尽に虐げられたレイナの心がこれ以上壊れてしまわないように
よほどの理由が無い限りは、見守ることにしたらしかった
レイナはアジトのあるマンションから学校へ行き
何か用事がある時以外は、そのままマンションに帰ってくるようになった
私服に着替え
イザナからリクエストされた献立の材料を、鶴蝶と一緒に買い出しに行く
料理に興味を持ち始めた鶴蝶とキッチンに並んで立ち、たあいのない話をしながら夕飯を作るのが、レイナの日課になった
アジトには、毎日たいてい2、3人の仲間が代わるがわる顔を出しては
イザナへの報告のついでに、レイナと鶴蝶が作った食事を食べていったり
リビングの一角にあるトレーニングスペースで筋トレをしたり、鶴蝶を外へ連れ出して稽古をつけたりしていた
全員が集まりやすい週末には、レイナも交えてレンタルDVDの映画鑑賞会を開いたり、誰かがドンキで仕入れてきたルールすらよく分からない謎のゲームで遊んだりするなど
揃って外出できないぶん、室内で楽しい時間を過ごした
そんな日々を送るうち
レイナの瞳の中にあった怯えたような陰は、段々と薄くなっていった
リビングのソファでギターの練習をしていたイザナが、ふとキッチンに視線を送ると
エプロン姿のレイナが、気配を感じて顔を上げる
" もうすこし まってて "
声に出さずそう言って、嬉しそうに笑う
心からの安心が宿るその表情に、イザナも笑顔を返した
過去が忘れられないのなら、思い出す暇がないように
イザナはレイナを自分の生活に巻き込んで
側で見守ることを選んだ
手段は多少強引だったかも知れないけれど
一緒に暮らし始めてから3ヶ月が経った頃には
夜中にうなされることも
甘い雰囲気の最中に泣きそうな顔をすることも
もう、無くなっていた