第15章 東京卍リベンジャーズ・黒川イザナ
手首を横切るように刻まれた、深い傷跡
それが一本ではないことにイザナは気付いていた
「……」
相手の男をこの世から消したとしても
レイナの記憶から、酷い目に遭った事実は消えない
イザナ自身、彼女に " 忘れろ " とは言ったが
それが簡単ではないこともよく分かっていた
フラッシュバックや悪夢を見て
衝動的に自分を傷付けてしまうことがこれまでに何度かあったのだろう
真新しい傷跡が無かったのが
せめてもの救いだった
(……これからは……オレが側で守るから…)
誓うように額に口付けると
レイナがゆっくりと目を開けた
柔らかな間接照明に包まれて、2人の視線が絡み合う
『……ありがと…イザナ…』
心の奥さえも見透かしたように微笑むと
彼女はアゴを上げてキスをせがんだ
感触を思い出しながら、柔らかな唇を何度も啄む
小さな水音を立てて離れたイザナの瞳を、レイナは泣きそうな顔で覗き込んだ
『………イ…ザナ?………私、もう大丈…』
「…ゴム無ぇんだから、あんま煽んな」
『…っ…』
「……フッ………ったく……覚えてろよ…」
そう言って
おどけたように鼻の頭に噛みつく
『痛っ…もー!噛むなんてひどい』
やり返そうとするレイナを、イザナは包むように抱きしめた
「コラ、暴れんな。……今日は色んなことがあって疲れたろ?…もう寝るぞ」
『……』
「…そんな不満そうな顔したってダメだ。………続きは明日。分かったな」
イザナの言葉に
レイナは力を抜いて身を委ねた
『……ウン。…また明日、ね』
「…あぁ…」
" また明日、会える "
今はただ
その幸せだけを噛みしめて
2人はもう一度キスすると
互いの温もりを感じながら、静かに目を閉じた