第15章 東京卍リベンジャーズ・黒川イザナ
翌日、病院を退院したイザナは
すぐにレイナに会いに行った
学校を休んでいるらしいと鶴蝶に聞いていたので
自宅を訪ねる
門を乗り越えて忍び込み
広い庭を横切って
いつもピアノの音が聞こえていた彼女の部屋へ向かった
庭と続きになっているテラスの窓から中を覗いたイザナは
ベッドの上で丸まっている小さな背中を見つけた
軽くガラスをノックすると
ビクッと身体を震わせたレイナが後ろを振り返る
『…っ…』
彼女はゆっくりと身体を起こし
窓の方へ近付いてきた
『………イ…ザナ…』
窓を開け、心配そうな瞳で見上げる
『……怪我…大丈夫…?』
イザナの頭に巻かれた包帯を見て、そう聞いてきたレイナの頬と額には
赤黒いアザが浮かび上がっていた
「……」
言葉を失ったイザナが彼女の腫れた頬に手を伸ばすと
レイナはハッと息をのんで後ずさった
『………ゃ……イザナ…………こんな…顔……見ないで……………嫌ぁ…っ…………ハァ……ハァ……ハァ……』
呼吸が上がり、苦しそうに胸を押さえる
「…レイナ、どうした…」
その時
部屋のドアが開いて、彼女の母親が入ってきた
「そこで何してるの!」
過呼吸を起こしている娘を抱きしめ
イザナを睨み上げる
「もうレイナに近付かないでって言ったじゃない‼︎こんな事になったのは、全部アナタのせいよ‼︎」
「…っ…」
「帰って‼︎早く出てって‼︎」
泣き叫ぶ母親の声を背に
イザナはレイナの家を後にした
その日の夜遅く
イザナが施設の部屋のベッドで横になっていると
救急車のサイレンが聞こえてきた
不安を煽るようなその音は次第に近付き、すぐ近所で止まる
「……」
胸騒ぎに襲われたイザナは
ベッドから起き上がり、裸足のまま外へ飛び出した
レイナの家の生垣が、点滅するランプの光に赤く染まっている
庭の方から数人の話し声がした
野次馬達をかき分けて前に出たイザナが門の中を覗くと、ストレッチャーの上に横たわる彼女の姿が見えた