第15章 東京卍リベンジャーズ・黒川イザナ
長い時間が過ぎ
イザナは中学生になった
真一郎は相変わらず
月に何度か施設に会いに来てくれていた
自らが経営しているバイクショップに連れて来ては
単車の乗り方や、手入れの仕方を教えてくれた
ある日
バイクショップの閉店後
ツーリングがてら施設まで送ってもらっている時
信号横の案内標識を見上げながら
イザナが聞いた
「…ねぇ……真一郎の家も…渋谷にあるんでしょ?」
「そーだ」
「渋谷って…電車だと横浜から遠いの?」
「そんなに遠くもねーよ。電車なら一本で行ける」
「ふーん…」
「…どーした?…やっとエマに会う気になったか?」
「……」
「……家の前までだけでも…今度一緒に行ってみるか?……バイク屋からだって…行こうと思えばスグなんだぞ?」
「…うーん……そのうち。…まだ、いいや」
「……何でだよ……この話すると…オマエ、いつも " そのうち " って言うよな」
「…別に…」
「……」
エマが真一郎の家に引き取られ、一緒に暮らしていると聞いた時
イザナはまたも妹の事を羨ましく思った
(……いつもアイツばっかりいい思いをして…ズルいや………真一郎みたいなお兄ちゃんと住んでいたら……オレの事なんか…きっともう忘れちゃってるんだろうな…)
「…オレは…真一郎と会えるだけでいい…」
「……イザナ…」
その言葉に
嘘は無かった
(……だって……エマは…オレに会いたいって……言ってないんだろ…)
もしエマがそう望んでいたなら
真一郎は間違いなくエマをイザナの元へ連れてくるはずだ
そうしていないってことは
きっとそういうことなんだと
何となく察していた
(……真一郎が側に居てくれれば……薄情者の妹なんて…もういらない…)
" 迎えに行く " と約束したはずのエマのことを
イザナはいつしかそんな風に思うようになっていた