第15章 東京卍リベンジャーズ・黒川イザナ
次の朝
イザナはいつもより遅く家を出た
教室に入った時、レイナが『おはよ』と声を掛けてきたけれど
聞こえないフリをしてそのまま席に着いた
その日は
授業中も、休み時間も
なるべく彼女の方を見ないようにして過ごした
そして、放課後
HRが終わると同時にイザナは席を立ち
自分の方へ来ようとしているレイナの横をすり抜けて教室を出て行った
急いで靴を履き替え
逃げるように走って帰る
彼女の家の前を通りかかった時
昨日の約束を思い出して胸がチクリと痛んだけれど
足を止めなかった
施設の玄関にたどり着き
下駄箱の前のすのこに膝をついたイザナは
口の中に血の味を感じた
壁の鏡に目をやると
強く噛みしめていた唇が切れて、真っ赤な血が滲んでいるのが見えた
「……」
鏡の前に立ち
表情を失った仮面のような自分の顔に
ペッと唾を吐きかける
目元の辺りにはりついた赤い液体が
ガラスの上をゆっくりと伝い落ちていくのを
イザナは
ただ静かに見つめていた