第15章 東京卍リベンジャーズ・黒川イザナ
挨拶以外で初めてちゃんと話をしたのは
数ヶ月後の下校の時だった
小さい頃から足が速かったイザナは
その日、5時間目の体育の授業で行ったグループ対抗のリレーでアンカーをつとめ
前にいる全員をごぼう抜きして
最下位だった自分のチームをトップに導いた
同じグループになったクラスメイト達は
イザナの走りを見てすごいすごいと盛り上がっていた
その中にレイナの笑顔を見た時
思わず微笑み返したイザナに
帰り道、彼女の方から声をかけてきた
『さっきのリレー、すごかったね!』
突然のことに何も返事を返せないでいると
レイナは『…かけっこが速いの羨ましいな…私運動苦手だからさぁ』と続けた
「……そう…なの…」
『…うん。短距離走はいっつもビリ……逆上がりも出来ないし…跳び箱も4段しか飛べないんだよね…』
しょんぼりしている彼女に元気になって欲しくて
イザナは「でも…勉強は出来るじゃん…ピアノだって弾けるし」と言った
『…ぇ…ピアノ?』
「ウン。いつも弾いてるだろ?」
『…黒川クン…どうして知ってるの?』
驚いたようなレイナの顔を見て
イザナはしまったと思った
(……ヤバイ…何か変なこと言っちゃった…)
「……ぁ……別に…ワザと聞いてた訳じゃないんだけど……たまーに…オマエん家の前歩いてると……外まで聞こえてくるから…」
慌てて弁解すると
彼女は『…そうだったんだ…』と苦笑いした
『……通りのほうまで聞こえてるなんて思わなかった…なんか恥ずかしいな…』
「…あんなに上手いんだから…恥ずかしがることないよ…」
『……ぇ…』
(…あー…また変なこと言っちゃった…)
緊張しているからか
余計なことばかり口走ってしまう
冷や汗が出てきたイザナに
彼女は顔を輝かせて言った
『…そんな風に言ってもらえて嬉しい……どうもありがとう…』
「……」
少し照れ臭そうな笑顔に
胸の奥がくすぐったくなる
いつの間にか
イザナも自然と笑顔になっていた