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裏夢・短編 詰め合わせ【東リベ etc.】R18

第15章 東京卍リベンジャーズ・黒川イザナ





イザナには、父親の記憶が無い
物心ついた時からずっと母子家庭だった


母親は、元々面倒見の良い人ではなく
幼いイザナの相手をあまりしてはくれなかった

けれど、イザナが4歳の時
妹のエマが産まれてからは
たまに笑顔を見せるようになった


産婦人科に母親のお見舞いに行った日
ベッドの横に、見たことのない男の人がいて
産まれたばかりのエマのことを抱っこして笑っていた

イザナが病室に入っていくと
一緒になって笑っていた母親の顔から
スッと笑顔が消えたのをよく覚えていた



男の人は
母親とエマが退院してからも何度か家に来た

イザナへの手土産に
ケーキやオモチャを買ってきてくれて
優しく話し掛けてくれたその人は
ある日を境に、パッタリと姿を見せなくなった



それからまた
母親の態度は以前のように戻ってしまった


話し掛けても、何も答えてくれない

それどころか
視線を合わせることすらしない


まるで
自分がそこに存在していないかのようだった





母親がそんな態度を取るのはイザナに対してだけで
幼いエマに対しては、まだ普通に接していた

そっくりな顔で笑い合う2人を見て
イザナは次第に妹のことを羨ましく思うようになった

そして
何故その微笑みを自分の方へは向けてもらえないのか
理由も分からないまま毎日を送っていた





自宅にあの男の人が来ていた時、母親はいつも機嫌が良かった

泣き出した妹をイザナがあやしてやると
大袈裟なくらいに喜んでくれた



「イザナはいいお兄ちゃんだね」


母親の口からその言葉を言われた時
とても誇らしい気持ちになった

胸の奥がくすぐったくなるようなあの笑顔を
もう一度見たかった



けれど
その願いが叶うことはないまま
ある日、イザナはこの場所へと送られた









(……嫌いな奴にどんなに嫌われたって……別に何ともない……)



笑って欲しい人がすぐ目の前に居るのに
相手は自分を見てもくれない

あの時の孤独感に比べれば
今のこの状況などイザナにとって大したことではなかった




(……エマは…今頃どうしてるんだろう…)



足先が冷えて感覚が無くなってしまっても
イザナはスニーカーに水をかけ続けた











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