第14章 東京卍リベンジャーズ・九井一
それから
数日後のある夜
煌びやかなネオンが灯る街中を
黒塗りの高級車が通り抜けていく
「……あー…今日も疲れたな…」
「…でも…上手くいって良かった…」
交渉相手との話し合いが無事に終わり
三途の車で自宅へと送ってもらっている途中で、九井のスマホが鳴った
液晶を確認すると
レイナの名前が表示されている
「……どうした?」
『…ぁ……まだ仕事中?』
「…?……いや……いま終わったところだ…」
『……そう………あのさ…今日って、来られるかな…』
彼女からそんな電話がかかってきたのは初めてだった
「…いいけど……どうかしたのか?」
不思議に思った九井が問いかけると
レイナは少しためらいがちに答えた
『……ん………今日、何の日か分かる?』
「今日?」
『……………クリスマス……だよ…』
レイナの口からそう言われると
それまで何でもなかった今日が、急に特別な日に思えた
「………クリスマス…」
『……だから…今夜は一緒に過ごしたい…』
素直な彼女の言葉に自然と笑顔になる
「………ウン………俺も…オマエと一緒にいたい…」
九井は
「今、たまたまオマエん家の近くにいるから…すぐ行く」と言って電話を切った
「………三途…………悪いけど……次の信号の手前で降ろしてもらえないか…」
「……」
けれど
三途は無言でアクセルを踏み、信号を通り過ぎた
「……三途?」
そして
信号の先のブロックにある深夜営業の花屋の前で車を停めた
「…こんな日に手ぶらで行くつもりじゃねーだろーな…」
「……ぁ…」
ハッとした九井を見て
三途は呆れたようにため息をついた
「……ったく……テメーは何でもソツなくこなすくせに…恋愛だけは初心者かよ…」
「……悪かったな…」
九井はムッとしてドアを開けると
冷やかしの目を向けている三途に「ありがとな」と言い
苦笑いで車を降りた