第14章 東京卍リベンジャーズ・九井一
互いに引き寄せられるように
唇が重なる
どちらからともなく舌を絡め合って
水音と吐息が静かな部屋に響いた
レイナの腕が伸びて
首の後ろに回されると
九井は彼女を抱き上げベッドへと運んだ
シーツに両手をつき
横たえた身体に覆い被さる
近付けた唇が触れ合う寸前
微かな電子音が聞こえた
「……っ………悪ィ…」
『……ウン…』
九井は起き上がり電話に出た
短い会話の後「すぐ行く」と言って電話を切ると
申し訳なさそうにレイナの方を向く
『……クスクス……忙しいね…』
「………ホントにゴメン…」
『…いいの……アナタの気持ちは…ちゃんと伝わったから…』
「……っ…今夜……また…来てもいいか?」
そう言った九井に
レイナは『待ってる』と笑顔で答えた
マンションを出た九井は
部下に回させた車で現場に向かった
その日は
細かなトラブルが重なって
慌ただしく時間が過ぎていった
いつの間にか夜になり
全ての仕事を終えた九井が事務所を出た時
突然スマホが鳴った
電話口の三途の声を聞いて
耳を疑った
「港区にあるウチのラウンジが火事みたいだ」
車を飛ばし、店の方へ向かう
店のある方角から黒い煙が上がって
夜空が炎の色に染まっていた
近づくにつれ道路が渋滞してきたため
九井は車を停めて全力で走った
何台もの消防車の横を過ぎ
店の前の通りに出ると
人だかりの中に三途の姿を見付けた
「…かなりまずいぞ……乾燥で火の回りが早い…」
「店の人間は⁉︎」
「向こうに集まってる」
三途の指差す方に
ドレスを着た女達の集団が見えた
九井は走って行き
レイナの姿を探した
(…レイナ……どこにいる…)
「九井さん‼︎」
憔悴した様子のママに付き添っていたラウンジのボーイが
九井の姿を見つけて走ってくる
「すみません!…使い終わった後のVIPルームから出火したみたいで…」
「…そうか……なぁ…レイナはどこだ…」
「…レイナさん……そういえば…姿を見てない…」
ボーイの言葉に
近くに居た女達が騒ぎ出した
「…ねぇ…レイナちゃん居なくない?」
「ほんとだ」
「…私も見てないよ」
「…もしかして…まだお店の中なんじゃ…」