第14章 東京卍リベンジャーズ・九井一
カーテン越しの朝日を感じて
九井が目を覚ますと
腕の中で
まだレイナが静かな寝息を立てていた
起こさないように手を伸ばし
枕元に置いたスマホで時間を確認すると
まだ早朝と言える時間帯だった
それでも頭の中はスッキリしていて
身体の疲れも取れていた
(……本当に…魔法みたいだよな…)
レイナの顔にかかっている髪を
指先でそっと後ろへ流す
目元に残っている涙の筋が
彼女が泣いたまま眠ったことを告げていた
「……」
微かな胸の痛みを感じながら
九井は昨夜の事を思い返した
好きだと告白してきたレイナに「やめとけ」と言ったのは
気持ちが無かったからじゃない
それどころか九井は
会うたびに少しずつ彼女に惹かれていく自分に
戸惑いを覚えていた
彼女と話していると
長い間凍ったままだった心が少しずつ溶かされていくような感覚があって
気が付くと
昔みたいに笑っている自分がいた
(……最初は……" 隣にいるとよく眠れる " ってだけだったのにな…)
昨夜
怒ったレイナに帰れと言われた時
もう会えなくなってしまうのではないかと本気で焦った
そして
彼女の存在が思っていた以上に自分の中で大きくなっていることを改めて自覚した
(……だからこそ……求めたらダメなんだ…)
これまでに、思いを伝えた直後に大切な人を失ってきた九井は
自身の気持ちを相手に表すことに臆病になってしまっていた
何度か試してみたトランプ占いも
これ以上関係を深めようとすると、レイナが遠くへ行ってしまうことを暗示していて
九井の確信を強める結果になった
さらに昨日、レイナの見た目や雰囲気が赤音や乾に似ていることに気が付いたことで
薄れていたはずの過去のトラウマが鮮明に蘇ってきたのだった
(……彼女と離れたくなかったら…今まで以上の関係を望んではいけない…………オレはもう2度と……間違いは繰り返さない…)
そんな事を考えながら
九井は
腕の中の安らかな寝顔を見つめた
「……」