第14章 東京卍リベンジャーズ・九井一
九井は
夢を見ていた
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目の前で
ゴウゴウと炎を上げている乾家
「赤音さん!」
ドアを蹴破り、煙の中を探す
「赤音さん!返事してくれ!」
廊下の奥に
倒れている人影を見つけた
「赤音さん‼︎」
駆け寄って抱き起こそうとした時
煙が晴れて
ハッキリと顔が見えた
それは
苦しげに息をして
気を失いかけているイヌピーだった
「……っ…」
炎の中
立ちすくむ
イヌピーを助けて外に出れば
赤音は手遅れになるかも知れない
けれど
このままイヌピーを見捨てて赤音を探しに行くことも
自分には出来なかった
究極の選択を迫られ
動けなくなっていると
周りの景色が病室のような場所に変わり
目の前の白いベッドの上に
昨日見た焼死体が現れた
微かな煙を上げているその死体が
突然目を開けて喋り出す
「…一くん……青宗を助けてくれて…ありがとう…」
「……っ…」
懐かしいその声に
涙が込み上げる
「……赤音さん………違うんだ………オレ…イヌピーの事を赤音さんだと思って…………あの時…赤音さんを助けたと思ったんだ…」
火傷だらけの身体に
泣きながら語りかける
「…一生守るって約束したのに……守れなくてゴメン…」
心拍数を示すモニターに真っ直ぐな線が表示され
ピーという機械音が響く
「……赤音さん…待って……死なないで……オレ…金なら幾らでも用意できるようになったから!…今なら助けてあげられるんだよ‼︎…赤音さん!…行かないで赤音さん!」
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身体を揺すられて目を開けると
目の前に青ざめた彼女の顔があった
「……赤…音さん…?」
飛び起きて
強く抱きしめる
「…生きてたんだね……良かっ…」
言葉を発しているそばから
意識が覚醒してくる
薄明かりに包まれたこの部屋は
レイナの部屋で
腕の中にいるのは
赤音ではなかった
「………悪い………寝ぼけちまったみてーだ…」
身体を離そうとすると
逆に強く抱きしめられた
「……っ…」
『……その人が……アナタの好きな人…?』
彼女の問いに
何故か九井は素直に答えることができた
「………あぁ…………でも……もうこの世には居ないんだ…」