第14章 東京卍リベンジャーズ・九井一
これまでの事を思い返してみると
最初から彼女は違っていた
初対面の時の、店での反抗的な態度
もしあれが他の女だったら絶対に許していなかっただろう
次の日、店に会いに行くことも
自宅に送るなんてことも
普段の九井からしたら考えられない行動だった
(……この女には…何か特別なものを感じる…)
梵天の連中との仲が上手くいっていない訳ではないけれど
自然に軽口をたたいて笑いあえる相手など
いまの九井の周りには、男ですら1人も居なかった
自分に寄ってくる人間達と違うのは
彼女が金に執着していない所だった
それが
心を許せる原因なのだろうか
そこまで考えた時
九井の頭の中にひとりの男の顔が浮かんだ
(……あぁ……そうだ…)
金を生み出す天才と言われ
財力を目当てに近付いてくる奴らばかりだった中
損得感情など抜きで自分と接していた特別な存在
彼女は
どこかアイツに似ていた
日本人離れした白い肌
長いまつ毛に縁取られた大きな瞳
整ったその顔立ちだけではなく
一緒に居る時の心を許せる独特の雰囲気が
どことなくアイツを思わせるのだった
彼女の隣だと安心して眠れたのは
バイクショップで一緒に寝ていた頃の気持ちを懐かしく思い出すからだったのかも知れない
「…オマエじゃなきゃダメなんだ……だから…頼むよレイナ…」
『……っ…』
レイナは戸惑ったような顔をして
九井の頬にそっと手をあてた
『…………ズルいよ……………そんな必死な顔されたら……追い出せなくなる…』
「……」