第14章 東京卍リベンジャーズ・九井一
その時
ふと思い立った九井は
ジャケットを拾い上げて財布を取り出した
「……コレ……取っといてくれ…」
ベッドサイドのテーブルへ札束を置いた瞬間
レイナがソファから立ち上がった
『…ねぇ…』
「…?」
『……また殴られたい?』
彼女の瞳は冷ややかで
どこか哀しげだった
「…いいから取っとけよ……邪魔になるモンじゃねぇだろ…」
『……』
レイナは乱暴に金を掴み、九井の手に押し付ける
『帰って』
「……っ…」
『…アナタ本当に何なの⁈早く出てってよ!』
そう言って
強い力で九井をベッドから立ち上がらせると、玄関の方へ身体を押す
『…私のことまだお金目当てだと思ってるわけ⁇人をバカにするのもいい加減にして!』
「……ち、違うって……昨日迷惑かけたから…その詫びのつもりで…」
その言葉に
彼女は力を緩めた
『…っ……本当?……ホントにそれだけなの?』
「…それだけに決まってんだろ……金で動く女じゃないって…あんだけ言われたんだから…忘れる訳ねぇっつの…」
『……』
「……」
『………だったら…今回だけは許す………でも、もう帰って…』
「……………分かったよ…」
玄関まで戻ったところで
九井は立ち止まり、レイナに言った
「……また…来ていいか?」
『はぁ⁇本気で言ってる⁇…これでも私、怒鳴り散らしたいの必死で我慢してるんだけど』
「…怒鳴りたきゃ怒鳴ったっていい…だから頼むよ…」
『…っ…何でそんなに私にこだわるの⁈…梵天幹部ともあろう男が、一緒に寝てくれる女も居ないワケ⁇』
苛立たしさを隠しもしない彼女を前にして
九井は戸惑いながら伝えた
「…そうじゃ、なくて…」
『…?』
「……多分…それじゃダメなんだ…」
『…っ…ダメって何が…』
「……だから……他の女じゃダメなんだよ…」
口に出してはじめて
九井は自覚した
(……そう……この女の隣じゃないとダメなんだ…)