第14章 東京卍リベンジャーズ・九井一
三途に呼び出された九井が向かったのは
今は使われていない工場の跡地
追い詰められた取引相手が焼身自殺を図ったらしく
現場の光景は想像していたよりも悲惨だった
慌てて火を消したのか
まだ微かに燻った煙が上がっていて
独特の匂いが嫌でも古い記憶を思い出させた
部下達に細かな後処理の指示を出すと共に
相手の持ち物を調べ、住んでいたマンションの方へも行ってみる
梵天との繋がりを示すものを全て処分し
金になりそうな情報を幾つか仕入れて部屋を出ると
既に夜が明けていた
九井は自宅へ帰り、シャワーを浴びて着替えを済ませるとそのまま事務所へ向かって夜中まで仕事をした
彼女の部屋のインターホンを押した時には
am 1:00 を過ぎていた
「……昨日は悪かったな…」
『……』
動揺したような様子でドアを開けた彼女を不思議に思いながら
いつものように無遠慮に上がり込む
ジャケットを脱ぎ捨ててベッドへ直行したけれど
目を閉じて待っていてもレイナが隣に来る気配は無かった
うっすらと目を開けると
彼女がソファの上で膝を抱えているのが見えた
「……何してんだよ…」
『………別に…』
「…じゃあ……隣、来いよ…」
『……ウン………一本吸ったら行く…』
そう言うとレイナはタバコを咥え、ライターを手に取った
カチッと音がして
ライターの炎が彼女の顔を照らした瞬間
九井は無意識に身体を起こしていた
「…っ…」
静かな部屋で
レイナはゆっくりとタバコを味わう
尖らせた唇から
フゥーと長い煙が吐き出されていくのを見つめていた九井が不意に言った
「……オマエ……タバコやめろよ…」
言葉にした途端、どうしてそんな事を口走ってしまったのかと戸惑った
案の定
彼女は怪訝な顔を九井の方へ向けた
『…は?……私、アンタの女じゃないんだけど』
「……」
九井が黙ってしまうと
レイナは呆れたようにため息を付いて、乱暴にタバコをもみ消した