第4章 東京卍リベンジャーズ・羽宮一虎
刑務所を出た後の一虎を
一緒に働かないかと誘ってくれたのは
"松野千冬"だった
若くしてペットショップのオーナーをしていた千冬は
心から慕っていた場地の仇であるにもかかわらず
一虎の事をとても気に掛けてくれた
一虎はそんな彼の気持ちをありがたく受け入れ
ペットショップを手伝わせてもらう事にした
そして
初めての休日
よく晴れた午後
一虎はまた江ノ電に揺られていた
のどかな駅で降りて
国道を横切る
横長の駐車場の端
堤防の上に座り込む人影を見つけた
「あれ?…海、入ってないの?」
声を掛けると
嬉しそうな笑顔が返ってきた
『…今日はオンショアでコンディション最悪。…こんな日はボードの手入れするしかないよ…』
手に持ったヘラを見せながら
自分の横に置いたボードを大切そうに撫でる
「…そっかぁ。晴れてればいいのかと思って来てみたんだけど、違うんだね」
『……わざわざ…見に来てくれたの?』
「…ぇ……まぁ……この間…君がメチャクチャ楽しいって言ってたから…見てみたいなと思ってさ」
そう言って笑う一虎を
彼女は眩しそうに見つめた
『……オニーサン…名前何ていうの?』
「……羽宮…一虎…」
『…カッコいい名前〜………私は…レイナ…』
レイナは『よろしくね』と言って
あの人懐こい笑顔を見せた
彼女が手入れに戻ると
一虎はボードを挟んで堤防に腰を下ろした
ヘラでワックスをこそぎ落とし
タオルに染み込ませたリムーバーで残りを拭き取る
ココナッツのような香りがフワッと立ちのぼった
「…すごいキレイになったね…」
ワックスを落としたボードの滑らかな曲線をなぞると
手に吸い付くような感触がした
『…ヨシ……後は…新しくワックスを塗って終了♪』
彼女がそう言って
着ていたパーカーのポケットから丸いケースを取り出した時
遠くの空からゴロゴロという音が聞こえてきた
顔を上げて沖を見ると
さっきまで晴れていた空は灰色に曇り
雨雲がこちらへ近づいているのが分かった